文学

わたしたちが光の速さで進めないなら

キム・チョヨプ著『わたしたちが光の速さで進めないなら』
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こんな人におすすめ!
  • SF小説を読んだことはないけど、興味はある
  • キム・チョヨプの作品は嫌いではないけど、好きでもない
  • 身近な非日常感を味わいたい

著者のキム・チョヨプさんは1993年生まれ。

浦項工科大大学院で生化学修士号を取得。

作家デビューは2017年です。

宇宙人

バリバリの理系人だね。

どんな本ですか?

著者の初作品集で、日本では2020年に出版されました。

次の7作品が収められています。

  • 巡礼者たちはなぜ帰らないのか
  • スペクトラム
  • 共生仮説
  • わたしたちが光の速さで進めないなら
  • 感情の物性
  • 館内紛失
  • わたしのスペースヒーローについて

『館内紛失』は第2回韓国科学文学賞中短編部門で大賞を受賞。

『わたしたちが光の速さで進めないなら』も佳作を受賞しています。

また、『わたしのスペースヒーローについて』は本書のための書き下ろしです。

なぜ読もうと思ったのですか?

40年間生きてきて初めて読んだSF小説がキム・チョヨプの『最後のライオニ』でした。

面白いとは思わなかったけど、なぜか他の作品も読んでみたいと思いました。

『わたしたちが光の速さで進めないなら』は短編集になっているので、一つぐらい好きな話が見つかるかもと思い読むことにしました。

実際に好きな作品を見つけました。

宇宙人

散歩のあとのTシャツ。クサイとわかっていてもついニオイ嗅いじゃうよね〜。

キム・チョヨプの作品はあれに近い感じがする。

心に響いた名言はありますか?

本書の中で一番好きな作品が『感情の物性』です。

ときめき、幸せ、恐怖、憂鬱などの感情を造形化した商品が発売された世界。

ユウウツ、フンヌなどネガティブな感情の商品が人気になります。

現実の世界ではそんなものが発売されても誰も買わないよ、と思いました。このセリフを読むまでは。

消費という行為を常に喜びに対する対価の支払いだと考えるのは間違っています。

『感情の物性』

私は生理痛がひどい。この痛みを体の外に出して、叩き潰すことを毎回想像してやり過ごしています。

感じることはできても目には見えない痛みを頭の中で物質化しているのです。

セイリツウあるいはヨウツウ、そんな商品があったら買うかもしれません。

宇宙人

著者あとがきに、同じテーマで長い作品も書きたいとあるので楽しみだね!

変化はありましたか?

先にも書いたように、『最後のライオニ』を特に面白いと思いませんでした。

でも、なぜか忘れられない作品でした。

今回『わたしたちが光の速さで進めないなら』を読んで、自分が何に惹かれるのか、わかった気がします。

  • 身近な非日常感
  • ディストピアではないが、ユートピアでもない
  • 優しいけど、甘くない

キム・チョヨプの作品を読んだ後には一種の矛盾した感情が湧きます。

この矛盾に惹かれるのだと気づきました。

まとめ

本書は短編集になっているので、好きな作品あるいはなぜか気になる作品に一つは出会えると思います。

また、放送大学の導入科目『世界文学への招待(22)』第11章で参考文献として取り上げられています。

現代の韓国SF小説を考えるうえで重要な作品と言えるのではないでしょうか。